ここでは中世の衣服の歴史について調べてみたい。
柳田国男氏が
「多数無名の我々の先祖の、当時としては最も有りふれた毎日の慣習が、
ゆかしいとは思ってもほとんどその一端を知ることができないのは誠に致し方がない。
そういう中でも衣と住とは、偶然に絵巻画本の隅に写生かと思うようなものが見えるが、
筆つきが簡素であるために材料までは確かめることがむつかしく、
ただまず形の著しく今日と異なっていることに驚くのみである。」
(「何を着ていたか」より)
と書き残した様に、装いの姿を明らかにする作業は困難なものである。
我々が知りたい中世の衣服は、歩兵の衣服である。歩兵独特の特殊な物もあるが、管見の限りでは、大抵その時代の有り触れた衣服を基礎としている。
古代から中世の衣服の遺物は数少ない。しかも特殊な物、高級品といった当時でも貴重とされた物ばかりで、逆に有り触れた物は残らない。消費されてしまうのである。ごく普通の衣服を探ろうとすると、必然的に文献・絵画といった間接的な資料を参考にしなければならないが、その間接資料も時代をさかのぼるほど、限られた地域(近畿)と身分の装いが多くなる。上級武士や奉公人であれば、絵巻物の中に姿を垣間見る事が出来るが、その様な者達が全てではない。
とはいえ、有り触れた衣服とて、資料の多い身分や地域の服装と決して断絶するもではなく、多少はあれどつながりを見いだせるのではないか。
そこで、、まず当然ながら服装史の先行研究を参考にする。その中でも関連性の深いと思われる武家の服装史を考察し、それから一般庶民(百姓)などの服装史を考察する。
さらに足りない部分を民俗学、現代の民具研究を参照しながら補完する。
雑多で広範囲な事項のまとめと、考察の中で、中世の戦場に於ける服装の姿が見えてくるれば幸いであるし、その服装を再現できれば、楽しめるのではないだろうか。
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