はじめに
刀剣は最も注目され、珍重され、なおかつ最も身近な武器・装備であろう。
ここでは中世の戦闘の場で使用された刀剣について、大まかな種類と時代ごとの変化を覗いてみる。よって儀礼刀等については極力触れない。
「太刀」と「刀」
中世使用された刀剣を大きく分類すると、「太刀」と「刀」に分ける事が出来る。
・太刀とは腰から「刃を上にして」「吊す」拵の物。
・刀とは腰から「刃を下にして」「帯に指す」拵の物。
異論も在ると思うが、刀剣を道具と考えた時、中世刀剣の分類は上記の様な区分けで充分である。
現に太刀として打たれた刀身を、後に打刀(いわゆる現在の日本刀)の拵にはめて利用している物も多い。その程度の違いに執着する事は、テーマと外れる為、度外視した。
太刀と腰刀の二本差し(『芦引絵』より) |
打刀大小二本差し (『洛中洛外図・舟木本』より) |
補足:「剣」という名称について
片刃の「太刀・刀」に対して、両刃の直刀を「剣」と呼んで分類する事が多いが、片刃の太刀であっても貴人の太刀に対して「剣」の字を使う事がある。
ただ中世の刀剣において両刃直刀の刀身はまず無いので、この場に於ける刀剣とは片刃の湾刀の総称を指す物とする。