改造



 では時代考証に基づいて、早速各パーツを改造していきたい。
 なお、時代設定は江戸開幕前後(1600年頃)とした。


00-01

 上図は仮組を分解したところ。
 接着にはエポキシ接着剤を使用し、真鍮線で補強。真鍮線は1mmを使用。上、下半身の接合部分には2mmの真鍮線を使用した。ちなみに2mmともなると、普通のニッパーやペンチでは歯が立たないので、ちょっとした鎖やピアノ線を切断できるニッパーを使用している。
 ホワイトメタルをピンバイスで穴開けするのはしんどいのでルーターを使用。それでも少しずつ削っていかないと、すぐに刃が引っかかって止まってしまう・・・。

 使用したエポキシパテは田宮の高密度タイプ。エポキシパテを使用したのは初めてなので、他のエポキシパテとの違いは分かりませんが、思ったよりも堅いんだなぁ・・・という感想。堅めのガムみたいですね。食い付きや伸びはとても良かったです。
 室温20度で12時間で硬化と表記がありますが、私は20時間は放置してから作業しました。粘土の様に作業できるは1時間半から2時間くらいでしょうか。硬化した後もゴムっぽいのですが、サクサクと削れました。
 ちなみにスパチュラなんて物は使わず、爪楊枝とデザインナイフで造形しています。


 では各部位ごとに観ていきましょう。


01.頭部


01-01

01-02

 髷をカットして短くした。また左右の鬢(びん)も低くしているのが分かるだろうか?矢印部分

 両画像共に、左が改修前、右が改修後。

 この後、髷の先をエポキシパテを使って補正している。



02.肩衣
(胴体部分01)


02-01
 袴の上にかかった肩衣の裾を切断する。目印に油性ペンで印を付けた。
 印は付けていないが、左右の側面もカットする。

02-02

02-03

 左が改修前。右が改修後。

 肩衣の左右側面・裾(赤矢印部分)を削り取ったのが分かるだろうか。
 左右側面はヤスリでゴリゴリと、裾はレザーソーでカットした後にヤスリで補正。


02-04
 エポキシパテで肩衣の前合わせを作る。
 事前に余分なモールドはヤスリで削り落としておいてある。

 袴が似合う男らしい体型にする為に、少々腹ボテにして差し上げた。やはり男は着物を着る時に、腹にタオルで詰め物をする様ではいけない。
 それに懐に懐紙や、その他小物を入れる訳だから、多少腹が出ている様に見えるのが自然だろう。

 それと脇差の位置を変えたので、脇差がはまる溝を埋めて、パテ盛りした部分に、新たに溝を掘ってやる。キットの状態は指している位置が後ろ過ぎるので、若干正面下部にした。

 最後に背中の縫い目を彫り込んでおきました(08-01の画像参照)。



03.袴
(胴体部分02)


03-01
 袴の腰(紐)の結び方を変える。

 まずはレザーソーで腰(紐)の結び目を切り落とす。後でこの部品(赤矢印)を使用する。
 それから腰(紐)全体を削り落とし、新たに腰(紐)を結びつける袴の下腹部に溝をヤスリで掘る(丸印)。

03-02
 上図のアップ。

 下腹部、袴正面の溝が見えるだろうか。

03-03
 後方。

 腰(紐)だけでなく(矢印@)、後腰の上部も(矢印A)、一緒に削り取ってやる。
 これは袴の下に巻く帯を、後から別パーツで巻いてやる為(下記参照)。

03-04
 削った部分に帯を巻いてやる。(赤矢印)
 厚さ0.4mm・幅2mmのプラペーパーで帯を再現した(実際には幅1mmの物を2幅使用)。
 はっきり言って完成後には、ほとんど隠れてしまって表には出ないのだが、これが袴の腰(紐)を結ぶ基準となるので、施してやっておくと、後々作業が楽だし正確。気分的にも違います。

03-05
 相引(股立)の隙間から覗く肩衣の裾を、プラパテで作ってやる(赤矢印部分)。これは元々のキットには施されていない。

 画像では右側だけだが、当然左側にも施している。

03-06
 脇差を取り付けた後に、前腰(紐)を巻く。
 脇差は二ヶ所に0.3mmの真鍮線を刺した後、エポキシ接着剤で留めている。

 腰(紐)には厚さ0.4mm・幅1mmのプラペーパーを使用。デザインナイフで半分くらいの厚さに削っている。
 ナイフで削ると軽く反るので、その反りを利用して巻き付けた。接着は普通のプラモデル用接着剤。表面を少し溶かして巻き付ければ、フィット感が良いし、金属にも接着出来る。

 巻き付けの手順は実際の袴と同じ。
 袴の上端に沿って前から後ろに回し(矢印@)、前に回して(赤線)、最後に帯の下端に沿って後ろに回す(矢印A)。
 赤線の部分は、後から後腰(紐)と重なるので省略した。

03-07
 プラ番で腰板を作る(矢印部分)。

 帯、肩衣の裾、前腰(紐)を覆う様に、エポキシパテで後腰を作る。先に色々とパーツを増設しているので、自然と盛り上がるのだが、少し多めに後腰上部を盛り上げてあげる。
 キットの状態では、いささか平坦すぎるのだ。ズボンならそれで良いが、袴だと後腰の布が盛り上がっている様なシルエットになるのが自然だからだ。 

03-08
 矢印@の部分は前腰の下に脇差が来るので、脇差に被さる様に前腰の布をエポキシパテで増設した。

 最後に後腰の紐を後ろから、前の結び目(矢印A)へ回してやる。作り方は前腰の紐と同じ。
 画像には写ってないが、前に結び目の部分に、切り取っておいた結び目のモールドを、0.5mmの真鍮線とエポキシ接着剤で取り付けた。



04.小袖
(袖部分)

  
04-01    04-02

 広袖だった袖を小袖に改造。

 思い切って袖の下半分をレザーソーとヤスリで除去。筒袖に成るくらい大胆に削ってやった。その後にエポキシパテで仕上げた。
 袖口下のカーブと脇の部分にこだわってみました。ぼってりとして冬物の綿入れ小袖の様に成ってしまったが・・・まぁ良いか。

 実は気にくわなくて、袖の部分は二回作り直している・・・。



05.足部

  
05-01    05-02

 初めは革足袋の設定だったが、無骨者は一年中素足じゃ!としました。
 指の部分は削り取って、エポキシパテで作ってあげています。



06.刀(大小)


大刀


06-01

06-02

 大刀の刀の方。

 鍔には小柄と笄を通す穴を掘った(06-01矢印部分)。
 柄は片側が諸手巻、片側が片手巻の様な中途半端なモールドだったので、削り落として、プラペーパーとエポキシパテで作り直した。


06-03

06-04

 大刀の鞘の方。
 番指の規定が定まった時代ではないが、安土桃山時代頃には、そういった拵も多くなっているので、それに従った。

 先ずは極細の丸ノミで、小柄と笄の櫃を彫り込み、そこにプラペーパーで作った小柄と笄をはめ込んだ。接着はプラモデル用接着剤。
 その後に栗型をエポキシパテで取り付ける。栗型にはドリルと針ヤスリで穴を開けてあります。


小刀(脇差)


06-05
 脇差にも小柄と栗型を取り付けておきます。やり方は大刀と同じ。
 ただし栗型には穴を開けませんでした。面倒でしてね・・・。
 それと柄頭にかけた柄紐をプラペーパーで増設(矢印@)。

 結構手間をかけたんですが、この辺りはほとんど袖で隠れてしまうんですよね。



08.全体


08-01

 一応、補修終了後の仮組状態。
 改造した場所が分かる様に、サーフェイサーを吹いていません。
 なおフィギュア本体と土台、飾台とを貫く様に、2mmの真鍮線を通してあります。

 しかし出来の良いキットなので、チョコチョコっとだけ補正して、チャッチャと塗るつもりでしたが、いじり始めると止まりませんでした。やはり自分が服飾マニアである事もありますが、服という物は構造が分かっていないと表面的な視覚だけでは捉えきれない物だな・・・という事もあります。特に和服は洋服よりも緩やかな作りなので、着こなしも理解していないといけないという側面も在りましょう。
 まぁ、工作自体は楽しかったですけどね・・・下緒を作るのをサボりましたが。



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