|
|
|
構造は本体である「台」、それに「緒(お)」、緒を通す「乳(ち)」、踵の「返し輪」から成る。(図A参照) (草履との混合型も存在するが、ここでは触れない) 先端の緒を足の親指と人差し指とではさみ、緒を乳に通しながら踵に回し、返し輪をくぐらせてから、足首に結び付けて固定し装着する。 (履き方に付いては様々あるが、ここでは一般的なやり方のみ記しておく) 草鞋の構造と、それに伴う装着の方法にも地域によって色々あり、各部位ごとにバリエーションを見てゆきたい。 |
|
・台 | |
B図を見てもらえれば分かる様に、基本的にはフリーサイズである草鞋の台にも大小がある。使用される地理的条件によって違いが出るようであるが、定かではない。 上の方の草鞋は比較的小さなサイズの台であるが、分かるであろうか?この草鞋は私の郷里である東京都府中市の物であるが、この地域では足よりも小さな台が一般的である。多摩川沿いという地理的条件が影響しているのかもしれない。 |
|
・緒 | |
よった藁紐の太さには様々あれど、特に差異は無い。 構造としては、大陸の「草鞋」の多くに、つま先から出る緒が一本の物がある。この緒を乳や返し輪に通してからグルリと足首を巻、固定して装着する。 これらはサンダル式で鼻緒式では無いのだが、この形状に近い緒が一本の草鞋が、山口県に残っているが(『はきもの』p.136)、一般的ではない。草鞋の古い形の一つなのかもしれない。 |
|
・返し輪 | |
返し輪は、その装着の方法から大きく2つに分ける事が出来る。 一つは挿入式の返し輪である。(図D) 比較的長めの返し輪を後乳に挿入して着用する。 この方法は大陸や台湾の形と同じである。 もう一つは不挿入式である。(図C) これは短めの返し輪で、後乳に挿入しないで着用する。 (後で述べる無乳・二乳草鞋は不挿入式だが、ここでは四乳草鞋についてのみとする) 潮田氏の調査によると(『はきもの』p.141〜143)挿入式は北九州をはじめ瀬戸内海を囲む山陽地方、四国の西部、近畿地方西部、さらには太平洋側の東海・東山(南部)・関東地方に分布する。 一方、不挿入式は、その帯から外れた西日本の周辺部や、北日本の雪国に見られる。 潮田氏は日本の地理と流通路をふまえ、大陸や台湾からの伝来のルートに関連しているのではないかと分析されている。 (返し輪を後乳に引っかける引掛式も存在するが、これは挿入式の亜種ではないか。) |
|
・乳 | |
緒を通す乳の数から、無乳草鞋、二乳草鞋、四乳草鞋、六乳草鞋、八乳草鞋の種類があげられる。 最も一般的なのは四乳草鞋だが、山伏や百姓が山歩きに使った八乳草鞋や、江戸時代の軍学者が履いたという六乳の武者草鞋など、強靱さを求められる条件の中で、乳や緒を切れにくくする為の工夫として、乳の多い特殊な草鞋もある。 また山間部の山仕事では無乳草鞋、二乳草鞋等、ゴンゾ草鞋と呼ばれる物が使用された。 無乳草鞋は、乳を作らずに緒を台に直接縫い通し、返し輪をくぐらせる形であり、乳の有る草鞋よりも古く、草鞋の原型をしのばせる物である(『はきもの』p.144)。 |